(第4話) 収集トラックで出会った人生の先輩たち

(第4話) 収集トラックで出会った人生の先輩たち


「トラックの中には、僕より長く生きてきた者たちがいた。彼らはへこみ、錆びつき、傷だらけだった。それでも、まだここにいた。」


ガタン、ゴトン。 収集トラックは荒い道を進んだ。荷台の中は暗く、窮屈だった。何百もの缶がごちゃ混ぜになり、揺れるたびにぶつかり合った。 「痛っ!」「気をつけてください!」「誰か僕の足を踏んだぞ!」「缶に足なんてあるか!」 騒がしかった。そして不快だった。しかし不思議と活気があった。皆が同じ方向へ向かっているという事実が、妙な一体感を生んでいた。僕は隅の方に場所を取った。隣には、さっき分別収集場で会ったビール缶がいた。

「ここからどのくらいかかるんですか?」と僕が尋ねた。 「1時間くらいかな?リサイクルセンターまで。」 「リサイクルセンター…そこへ行くと何をするんですか?」 「分別さ。まともなやつを選り分けて、へこんだやつは伸ばして、溶かしてからまた作るんだ。」 「また作られる…」 僕の胸は高鳴った。新しく生まれるのだ。もう一度、始まるのだ。 「でもな」とビール缶が言った。「みんなが生まれ変われるわけじゃない。中には壊れすぎて…そのまま廃棄されるやつもいる。」 「廃棄、ですか?」 「ああ。リサイクルもされないってことだ。そしたら埋め立てられるか、焼却されるか。」 瞬間、恐ろしい考えがよぎった。 「僕は…大丈夫でしょうか?」 「さあな。お前の状態次第だ。」

その時、後ろから声がした。 「大丈夫だよ、若いの。」 振り返ると、古びたブリキの弁当箱がいた。塗装は剥げ、所々に錆が浮いていたが、妙に品格があるように見えた。

「あの…先輩は?」 「わしか?わしは30年になる。」 「30年ですか?!」 「1995年生まれだよ。当時は弁当箱といえば、みんなこうしてブリキでできていたんだ。今みたいにプラスチックじゃなくてな。」 僕は感嘆した。30年。僕はまだ数日しか経っていないのに。 「30年間…何をされていたんですか?」 「弁当を詰めていたよ。毎朝な。持ち主がご飯を詰め、おかずを詰め、学校へ持って行き、会社へ持って行き。そうして30年だ。」 「わあ…」 「最初はピカピカだった。新品の弁当箱だったからな。だが時が経つにつれて塗装は剥げ、錆びつき、へこんだりもした。」 弁当箱は自身の体を見下ろした。 「見栄えが悪いだろう?」 「いいえ。素敵です。」と僕は心から言った。 「素敵だと?」 「はい。その歳月が見えます。30年間、毎日ご飯を詰めていたなんて…すごいことじゃないですか。」 弁当箱は笑った。温かい笑顔だった。 「ありがとう。だが持ち主はそうは思わなかったらしい。ある日、わしを捨てたんだ。」 「どうして?まだ使えるのに。」 「新しいのに買い替えたそうだ。最近のは電子レンジにも入るし、洗浄も楽だしな。わしは旧式だから。」 瞬間、胸が痛んだ。 「それは…寂しかったでしょう。」 「最初はな。30年も一緒だったのに、あっさり捨てられるとは。だが、ここに来る道中で考えたんだ。」 「何をですか?」 「私の役目は終わったんだな、と。30年間、毎日ご飯を詰めたなら、それで十分じゃないか、と。」 弁当箱の声は淡々としていた。悲しみも、恨みもなかった。ただ、受け入れている口調だった。 「それにだな」弁当箱は周りを見渡した。「ここにいる連中はみんなへこんで、壊れて、傷だらけだ。だが、それは悪いことじゃない。我々が生きてきたという証拠だからな。」

僕はその言葉を噛み締めた。傷が証拠だなんて。 「あの、おじいさん。」 前方から声がした。若いコーラ缶だった。ピカピカの赤いデザイン。 「僕はまだへこんでいません。綺麗です。」 「そうか。それは良かった。」 「でも…僕もへこむんでしょうか?いつか?」 「おそらくだ。」と弁当箱は笑った。「誰でもへこむさ。時が経てばな。」 「嫌だなあ。僕、可愛いのに。」 「はは、若者らしい言葉だ。だがな」弁当箱はコーラ缶に言った。「へこんだからといって終わりじゃない。見ろ、わしはまだここにいる。へこんで、錆びて、年老いてもだ。」 「それでも…新しい方がいいじゃないですか。」 「新品は綺麗だ。だが、物語がない。」 「物語、ですか?」 「うむ。わしには30年の物語がある。毎朝のご飯、昼休みの味、持ち主の手の温もり。そのすべてがここに刻まれている。」 弁当箱は自身のへこんだ部分を撫でた。 「このへこみは、ある日落とされた時にできたものだ。この錆は、雨に濡れた日に拭いてもらえなくてできた。すべてが物語だよ。」 僕は改めて弁当箱を見た。彼の傷一つ一つが、物語だった。

その時、ビール缶が割って入った。 「確かにな。俺もへこんでるが、まだアルミニウムだ。溶かして作り直せば、新しい缶になる。」 「でも、兄さん」とコーラ缶が尋ねた。「生まれ変わったら…兄さんは兄さんのままなの?それとも別の誰かになるの?」 一瞬、沈黙が流れた。 「…分からん。」ビール缶は正直に答えた。「記憶はないだろう。溶ければ全部消えるからな。だがまあ、材質は同じだ。アルミニウムはアルミニウムさ。」 「じゃあ、兄さんは消えるんですね。兄さんじゃない何かが生まれるんだ。」 「そうかもしれんな。」 「怖くないんですか?」 「怖いさ。」とビール缶は認めた。「自我が消えるのはな。記憶がなくなるのは。だが、どうしようもない。選択権はないんだから。」

「あの…」と僕が恐る恐る言った。「生まれ変わったら、僕たちは違うものを入れられますよね。弁当箱がコーヒー缶になるかもしれないし、ビール缶がコーラ缶になるかもしれない。」 「それはそうだな。」 「それなら、それって…終わりじゃなくて、変身じゃないでしょうか?」 「変身?」 「はい。同じ材質で、違う姿に生まれること。死ではなく、変化?」 弁当箱は頷いた。 「そう考えると、少しは気が楽になるな。変身、か…。」 「でもよ」とビール缶が言った。「変身したところで、結局また使われて捨てられる。無限ループじゃないか?」 「そうです。それがまさに、循環なんです。」と僕は言った。「僕たちは循環しているんです。生まれて、使われて、捨てられて、また生まれる。果てしなく。」 「それって…良いことなのかな?」とコーラ缶が尋ねた。 「分かりません。でも、少なくとも意味はありますよね。一度使われて終わるよりは。」

その時、トラックが速度を落とした。目的地が近いようだ。 「もうすぐ着くようだな。」と弁当箱が言った。「リサイクルセンターだ。」 皆が緊張した。次の段階だ。溶鉱炉がある場所。 「怖いか?」とビール缶が尋ねた。 「はい…怖いです。」と僕は認めた。「溶けるのが…消えるのが…」 「大丈夫だ。」と弁当箱が慰めた。「わしも怖い。30年も生きてきて、今溶けてなくなるとはな。だがな」 弁当箱は空を見上げた。トラックの幌の隙間から夕日が見えた。 「もう十分に生きた。30年間、毎日ご飯を詰め、持ち主の腹を満たし、思い出になった。それで十分だ。これからは、違う形で生きてみる時なんだ。」 「違う形で…」 「うむ。もしかしたら、わしは綺麗なコーヒー缶になるかもしれんし、丈夫なビール缶になるかもしれん。30年前の古い弁当箱ではなく、何か新しいものに。」 「じゃあ…おじいさんは終わるんじゃなくて、続くってことですね。」 「その通りだ。形が変わるだけだよ。」 コーラ缶が笑った。 「じゃあ、僕は来世、何になるかな?」 「分からんな。だが何になろうと、お前はアルミニウムのままだ。赤くてピカピカのな。」 「やった!来世も可愛く生まれるぞ!」 皆が笑った。緊張が少しほぐれた。

トラックが止まった。荷台の扉が開いた。明るい光が差し込んできた。僕たちは目を細めて外を見た。巨大な工場が見えた。煙突から煙が上がっている。あの中に溶鉱炉があるのだろう。 「さあ、降りろ。」 作業員の聞こえた。荷台が傾いた。僕たちは皆、滑り落ちた。弁当箱、ビール缶、コーラ缶、そして僕。何百もの缶がコンベアベルトの上へ落ちていった。 「達者でな、若いの。」と弁当箱が言った。「来世でまた会おう。」 「来世で?」 「うむ。もしかしたら、お前とわしは同じ製品になるかもしれん。そしたら兄弟だな。」 「兄弟…いいですね。」 僕は笑った。コンベアベルトが動き始めた。僕たちはゆっくりと前へ進んだ。溶鉱炉へ向かって。 「だがな」とビール缶が最後に言った。「人生は一度へこんだら終わりだなんて言うだろ。だが俺たちは違う。へこんでも、錆びても、また溶かして新しく作れる。人間にはできないが、俺たちにはできるんだ。」 「そうですね。」 「だから、へこむことをあまり怖がるな。それが終わりじゃないからな。」 僕は頷いた。そして前を見た。溶鉱炉の赤い光が見えた。怖かった。しかし同時に、期待もしていた。 僕は、何になるのだろう。どんな姿で、生まれ変わるのだろう。そして、誰と出会うのだろう。 「来世で会いましょう、皆さん。」 僕が言った。 「ああ、来世でな。」 僕たちは皆、同じ方向へ進んでいった。終わりへ向かって。そして、新しい始まりへ向かって。

私の考え! 私たちは傷つくことを恐れます。へこむことを、壊れることを、老いていくことを避けようとします。30年前の弁当箱のように、錆びて塗装が剥げた自分を恥じます。しかし、空き缶がトラックで出会った先輩たちは教えてくれます。へこみは生きてきた証拠だと。傷は物語だと。あなたのシワ、失敗の記憶、後悔の跡。それらは、あなたが懸命に生きてきたという勲章です。完璧に輝く新品は美しいですが、物語がありません。あなたは新品でなくてもいいのです。へこんでいても、錆びていても、あなたには価値があります。そして、終わりが怖いなら思い出してください。それは新しい始まりだということを…。

次号予告:第5話「溶鉱炉の前の悟り - 完全な空」 - 溶けることは死か、再生か? #空き缶の一日 #へこんだ人生 #傷は証拠 #循環の意味 #来世

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